燃え殻の「明けないで夜」を読んだ。
人名ぽくないが、燃え殻は作者のペンネームだ。
本屋でこの人のおしゃれな小説を見たことがあり、てっきり17歳くらいでSNS発信でデビューした新進気鋭の小説家だとばかり思っていたが、今回エッセイを読んで驚いた。
落ち着いていてとがったところの無い、言葉遣いが丁寧というか、内省的な人柄がにじみ出ていた。しかもなんかエモーショナル?気になって調べたら、なんと私と同じ年齢の人だった。
相変わらず私の初見の勘は外れっぱなしだ。
それにしても、何で「燃え殻」なんて名前にしちゃったのかしら。確かに目立つけど、開運はしなそうな名前だなぁ。
言い回しがすごく好ましくて「あ、このフレーズ真似したい」と思う文章が多かった。(といいつつメモなどとらない相変わらずのイージーモード読書)
だからこそ、このペンネームじゃない気がするのだ。いらん世話かもしれんが。
幼い頃、祖母の足裏マッサージをした話、病気の母親の手を強く握る話、亡くなった知人の話。
しんとした夜中にそっと聞くような話もあれば、深酒して路上で寝る話とか、社会人という役を脱ぎ人間に戻る儀式とか、面白い話も多い。
燃え殻さん、なんか喧嘩しなさそう。
で、一番おもしろかったのは、専門学校の後輩だった女性に「いい意味か悪い意味かわからないけど、絶対世に出ると思っていた。物を書いてくれてよかった。犯罪側じゃなくて」と言われたそうである。
わかる。私にも、同じことを思っていた先輩が一人いたのだが、犯罪者になるどころか愛妻家で子煩悩で、マイホーム建てちゃったりしてた。
・・・でも、まだこれからだと思っている。先輩私はあきらめてないよ!
人生の踊り場で聞きたい、
他愛のない大切な話たち---TENDRE(アーティスト)
BRUTUS.jp×J-WAVE「BEFORE DAWN」「夜リラタイム」連載、待望の書籍化
“絶対的な安心感”が詰まった30篇とちょっとのエッセイ集
………
日常をなんとかやり過ごすためには、
映画館の暗闇の中のような絶対的な安心感が必要だ。
映画館の暗闇の中のような言葉や音楽。
誰にも教えていないパートナー、ひとりの時間。
寄り道と空想。
たしかな肩書きや名前の付いていない
あれやこれやが僕を支えている
次に読みたい本
私を勘違いさせた表紙。作者が若者と思い混んだのは、このおしゃれフォントとペンネームのせいだ。