金子怜介の「死んだ山田と教室」を読んだ。
本屋大賞にノミネートされている作品だ。
読むと辛くなるようないじめの話だったらどうしようと思っていたが、前半は男子高校生のしょーもない会話で話が進む「セトウツミ」みたいなテンションでとても面白かった。
しかし、じわじわと山田くんの置かれた状況の恐ろしさが伝わってきて胸が痛む。
クラスの人気者山田くんが飲酒運転の車にはねられて死んでしまう。
落ち込むクラスメート達を励まそうと担任の先生が語りかけるが、誰も反応しない。
そこに、スピーカーから山田が会話に参加してきて・・・
身体は死んだはずなのに、スピーカーから声だけが聞こえてくる。
最初こそ驚きチヤホヤされる山田だが、そのうち声だけの存在の山田にみんなが順応し楽しくクラスメイトと談笑するようになる。
しかし、みんなが進級してしまうと、山田はただひたすら友達が話しかけに来てくれるのを待つだけの存在となる。
それでも、一年目はまだ良かった。2年たち彼のことを知るクラスメイトが卒業してしまうと山田はただひたすら人の話を聞くだけの存在となってしまう。
教室に取り残されたまま、成長もせずひたすら囚われ続ける辛さで怨念化して一気にホラー的な展開に・・・なってもおかしくないところだが、山田はちゃんと正気を保っていた。
設定ですでに勝っていると言えるような小説だった。
最後は、山田の死の真相が明らかになるのだが、それとともにこのちょっと不思議なタイトルの意味がストンと腹落ちする。
作中で、夜中に暇すぎて一人でラジオパーソナリティごっこをする山田くん。
それを、実際にやっているスピンオフもあった。
自分はなぜ生きているのか、自分はなぜ死なないのか、逡巡の中にいるすべての人へ。私がずっとデビューを待ち望んでいた新人の、ユーモアと青臭さと残酷さと優しさが詰め込まれた快作です。ーー金原ひとみ
夏休みが終わる直前、山田が死んだ。飲酒運転の車に轢かれたらしい。山田は勉強が出来て、面白くて、誰にでも優しい、二年E組の人気者だった。二学期初日の教室。悲しみに沈むクラスを元気づけようと担任の花浦が席替えを提案したタイミングで教室のスピーカーから山田の声が聞こえてきたーー。教室は騒然となった。山田の魂はどうやらスピーカーに憑依してしまったらしい。〈俺、二年E組が大好きなんで〉。声だけになった山田と、二Eの仲間たちの不思議な日々がはじまったーー。
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人生の一時期しかない貴重な高校時代を浪費する彼ら。ただひたすらしゃべくるだけの漫画なのになぜか面白い。