村上春樹の短編集「東京奇譚集」を読んだ。日常に潜む非日常的な出来事を描いた5つの短編が収録されている。
この話をイッセー尾形が朗読をしていて、独特の語り口が物語によくあっている。
イヤホンで聞いていたのだが、いい意味で?何回も眠ってしまい、何度もリピートをした。いい意味で。
特有の意味不明感があるので、若い頃はあんまり好きではなかった村上春樹だが、この特有の春樹感をたのしめばいいのだと気づいてからはようやく読めるようになった。
とはいえ、数本の話の中でちゃんと理解できたのは「ハナレイ・ベイ」と「品川猿」のみ。後の二つは割と意識が朦朧として理解を放棄してしまったかもしれない。
いや、綱渡りをする女とか、階段でふっと消えたメリルリンチに勤めている男なんて特殊な設定はちゃんと覚えているんだが、結局その話がどういうふうに収束したのかよくわかっていないのだ。
まあ、このよくわからんのも味ってことで。
一方、ハワイで息子をサメに食われて亡くした母親の話「ハナレイ・ベイ」は抜群にかっこいいマムの話で良かった。
息子を亡くして10年も同じ場所を訪れる母親の悲しみと、それでも生きていく強さに胸を打たれた。特に「息子じゃなかったら、彼のことは嫌いだったに違いない」なんて言うくだりはしびれるな~
吉田羊主演で映画化もされたらしい。
「品川猿」は、猿に名前を盗まれてしまう女性の話。おそらく文庫表紙のイラストはこの猿だろう。
自分の名前が時々思い出せなくなった。
思いあまってカウンセラーに相談してみたら、その人の良さそうな福々しい女性カウンセラーが原因と特定したのは、人を食ったようなちょっと卑屈な猿だった。
なにかの暗示があるのやら、ないのやら。
奇譚集というだけあって東京に散らばるとびっきりへんてこなお話を楽しむ事ができる。
さて、村上春樹の感想文ってどうしても村上春樹だなぁ、に尽きてしまいがち。
これって、一時期「キムタクは何をやってもキムタク」といわれてた状況と同じだろう。
いや、自分の語彙力が足りないことを棚に上げちゃいかんけど。
肉親の失踪、理不尽な死別、名前の忘却……。大切なものを突然に奪われた人々が、都会の片隅で迷い込んだのは、偶然と驚きにみちた世界だった。孤独なピアノ調律師の心に兆した微かな光の行方を追う「偶然の旅人」。サーファーの息子を喪くした母の人生を描く「ハナレイ・ベイ」など、見慣れた世界の一瞬の盲点にかき消えたものたちの不可思議な運命を辿る5つの物語。
次に読みたい本
奇譚集で検索するとそれはそれは楽しい表紙が並んだのだが、中でもこれは気になった。
あのシャーロック・ホームズの生みの親コナン・ドイルの奇譚集だ。
なにこれ、めっちゃ表紙がかわいいんだけど。