大島真寿美の「ピエタ」を読んだ。読んだ、というより今回の読書は「鑑賞した」に近い。
「ビバルディ」とそのゆかりの女性たちの話なのだが、小泉今日子の朗読も良いし、要所にオーケストラの音楽が入っていて素晴らしかった。
耳で聞く読書は本で読む読書の代替品というイメージでいたが、この作品は超えてきたかも
こういう作品が増えると、読書の幅もひろがるなぁ。
そもそも私、音楽の素養がなさすぎてビバルディと言われても「四季の春の人」という浅い知識しかないのである。
そんな私のためにビバルディが奏でたであろうバイオリンの旋律などがそっと差しはささまれる。この入り込み具合もまた絶妙で、メインは朗読なのでストーリの進行を妨げることはない。
物語は、ピエタ(孤児院?)で育ったエミーリアとピエタで音楽を教えていた赤毛の司教「ビバルディ」そして、ビバルディと何かしらの縁を結んだ女達のおりなす話だ。
この物語には、男性が出てこないのだ。
いや、もちろん男の人はたくさん出てくるのだが、愛や憎しみなんかがどこか遠い。
修道女的生活をしているエミーリアを通して語られるからかどこか上品で、愛や恋だけが人生の幸せではないと思わせてくれる。
女達の織りなす話、と聞いてイメージする女性週刊誌的ないやらしさはなくて、尊敬するビバルディ先生を男としてではなく人として愛した女たちが、彼の死後に引き起こしたドラマなのだ。
ビバルディの愛人だったクラウディアに、教え子で貴族のヴェロニカ、薬剤師のジーン、そして愛弟子アンナマリーア。みな、愛すべきビバルディの娘たちだ。
美しいヴェネツィアの街と音楽を味わえる物語だったが、特に最後ヴェロニカが書いた「娘たちのうた」が再発見されるシーンにはしみじみとした感動を覚えた。
この話、ジブリ映画にしたらいいんじゃないだろうか!
というか、ジブリ映画にしてほしい。エミーリアがいつまでも少女のような心をもっているところとか、気高いノブレス・オブリージュの思想をを持つヴェロニカとか、宮崎駿が好きそうな永遠の少女感があると思う。
随分前の本屋大賞受賞作とのことで、読んだことがなかったのだがこの作品は是非Audibleで聞くことをおすすめする。
2012年本屋大賞第3位!!
18世紀、水の都ヴェネツィア。
ゴンドラが運んでいくのは、
秘めた恋とかけがけのない友情――
生への限りない祝福に満ちた感動作!
18世紀ヴェネツィア。『四季』の作曲家ヴィヴァルディは、
孤児たちを養育するピエタ慈善院で、〈合奏・合唱の娘たち〉を指導していた。
ある日教え子エミーリアのもとに恩師の訃報が届く――
史実を基に、女性たちの交流と絆を瑞々しく描きだした傑作。
次に読みたい本
これくらい噛み砕いてくれたら私にもわかるかも。