『赤と青とエスキース』の青山美智子が書いた「リカバリー・カバヒコ」を読んだ。
本屋大賞にノミネートされた作品。
新築マンションの近くに、昔からある日の出公園。
そこにあるアニマルライド「カバのカバヒコ」には不思議な力があると言い伝えられていた。カバヒコを触ると触った場所が治ると言われているのだ。
新しくマンションに越してきた住民たちが、ちいさな、でも本人たちにしては深刻な悩みをカバヒコに打ち明け解決すしていく物語。
もちろん、カバヒコにスピリチュアルな力があるわけではないし、喋ったり奇跡を起こすわけでもない。
ただ、ひっそりそこに設置されているだけの古い遊具なのだが、悩みを抱えた人たちはみなカバヒコを撫でながらお願いをする。
自分の悩みをきちんと口に出して言うことで、「この悩みって自分で解決できるんじゃない?
」と気づいて、皆自分の力ので立ち直っていくのだ。
成績不審に悩む男子高校生は、最初「僕のバカを治して」ほしいと考えている。
でも、何の努力もしていなかったことに気づいて、周りのせい人のせい誰かのせいと考えていた自分を見つめ直す。
彼の成績が上がったかどうかまでは書かれていない。
ても彼がそのことに気がついたことが大事。
後半にチラリとお好み屋さんでバイトする姿が描かれる。青春!
そんな感じで、登場人物たちが少しずつ被りながら綴られた連作短編集だった。
優しい気持ちになれる一冊。
5階建ての新築分譲マンション、アドヴァンス・ヒル。近くの日の出公園には古くから設置されているカバのアニマルライドがあり、自分の治したい部分と同じ部分を触ると回復するという都市伝説がある。人呼んで”リカバリー・カバヒコ”。アドヴァンス・ヒルに住まう人々は、それぞれの悩みをカバヒコに打ち明ける。高校入学と同時に家族で越してきた奏斗は、急な成績不振に自信をなくしている。偶然立ち寄った日の出公園でクラスメイトの雫田さんに遭遇し、カバヒコの伝説を聞いた奏斗は「頭脳回復」を願ってカバヒコの頭を撫でる――(第1話「奏斗の頭」)出産を機に仕事をやめた紗羽は、ママ友たちになじめず孤立気味。アパレルの接客業をしていた頃は表彰されたこともあったほどなのに、うまく言葉が出てこない。カバヒコの伝説を聞き、口を撫でにいくと――(第3話「紗羽の口」)誰もが抱く小さな痛みにやさしく寄り添う、青山ワールドの真骨頂。
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