原田ひ香の「古本食堂」を読んだ。
週末なので、一杯飲んで軽い気持ちてエンターキーを押したら、書いていた下書きが全て消えた今この瞬間・・・すべてを投げ出したい。
この、右手の軽やかな動きが注意一病怪我一生というキャッチコピーを地で行っちゃったのである。
これからポップコーンを作って金曜ロードショーのトップガンでも観てやろうと思っていたのに。いや、諦めるな私。古本食堂おもしろかった!で終わる手もある。
いや、端的に色んな本にまつわる連作短編集で、面白かったのだ。
急死した兄がやっていた古本屋を継ぐために北海道から上京してきた珊瑚さん。おそらく60代。
神保町のこの小さな古本屋は実は結構な資産価値があり、そのことを知った唯一の親族の甥の嫁が「珊瑚さんがこの本屋をどうするかは、それは彼女しだいだけど、騙されたり急に結婚したりしないように」と娘のみききちゃんを派遣する。
みききちゃんは国文学部に通う院生で、自分の進路に悩んでいるのだが、古本屋もオジさんも大好きで、本当はこの古本屋を継がせてほしいと心のそこでは思っていたのだ。
一報老人たちは、こんな若い人たちに古本屋を継いでくれなんてとても言えない、と思っていたのだった。
自分から古本屋をやらせてくれなんて、厚かましくて言えなかった見聞きちゃんとオジとおば達は、お互い優しさでお見合いみたいになっていたのだが、最後はおじさんの残したちょっとした暗号メッセージを解くことで、無事みききちゃんが古本屋をつづけていくことになるという、ハッピーエンドストーリー。
一話ずつ、悩みを抱えたお客に選んであげる本と食べ物がありその本らがとてもおもしろそう。
第一話は、幼稚園に行き始めた息子に作るお弁当に苦悩する若い母親に渡す、小林カツ代の「お弁当」の本。
きれいな写真がたくさん乗った大判のお弁当の本はたくさんあっても、その通りに作ることしかできない彼女は、ものすごく手の込んだ小さな弁当を作るために、大変な労力を使い、疲労困憊していたのだ。そんな彼女にサンゴさんは「あなたには読み物の料理本がいいかも」とこの本をおすすめする。
他にも、この世にはもう面白いことは何もないと思っている達観したような青年にわたした、「本多勝一の極限の民族」
もう新しい小説なんて出尽くしていて書けないと諦め書けている作家の卵青年にわたした「御伽草子」
どちらも青年を変える力を持っていた。そう、正しく本を処方すると人生が変わるのだ。
ちなみに青年たちはふたりともみききちゃんにほの字みたいで、それもまた楽しい。
鷹島珊瑚は両親を看取り、帯広でのんびり暮らしていた。そんな折、東京の神田神保町で小さな古書店を営んでいた兄の滋郎が急逝。珊瑚が、そのお店とビルを相続することになり、単身上京した。一方、珊瑚の親戚で国文科の学生・美希喜は、生前滋郎の元に通っていたことから、素人の珊瑚の手伝いをすることに……。カレー、中華など神保町の美味しい食と思いやり溢れる人々、奥深い本の魅力が一杯詰まった幸福な物語、早くも文庫化。
次に読みたい本
極限の民族ではエスキモーの人たちの暮らしのルポが書かれているらしいのだが、食べたいときに食べ料理をしない彼らの生活は全く持って日本と私達とは違うのだ。
幸せはどこにあるのか、ということまで考えてしまいそう。
この中の、谷崎潤一郎が書いた三人法師を読むべし、とあった。うろ覚えだけど。
さて、ポップコーンでも作ってトップガンでもみましょうかね。いしし。