原田マハの「板上に咲く」を読んだ。
実はこの人の「楽園のカンヴァス」がずっと積読になっていて、そのせいでなんだか後ろめたくて一冊もよんだことないんだよねー
今回、ようやく一冊目にチャレンジできてよかった。
(というか、もはや原田宗典って誰世代が多いのかしら?バブルのイメージ強いもんなぁ。)
さて、物語は版画の巨匠棟方志功の物語。彼の妻、チヤさんが語る棟方志功の半生の物語。
棟方志功の版画とか、目をすごく近づけて版木をほっている写真などはなんとなく記憶にあるが、そう言われてみるとどんな人なのか、どんな作品なのかについて、ほとんど知識のないことに驚く。
というわけで、ウィキペディアを読んだ。
ああ、早々、瓶底眼鏡だったね。「わだはゴッホになる」も有名なせりふだよね。
--
芸術家を目指した貧乏な青年と恋に落ち、近所の神社で勝手に結婚してしまうチヤ。
当時の青森の田舎では相当後ろ指刺されたんじゃなかろうか、一切そのことは書かれてはいないけど、風当たりは騒動のものだったはず。
職業婦人になると言って地元を飛び出すも、すぐに同郷の棟方とバッタリであって、即結婚(その始まりは新聞紙上で尋ね人欄での公開プロポーズ)。近所の神社でお賽銭を上げて二人だけで結婚を決めてしまった。
しかし「とても東京に妻子を呼び寄せる器量がないから」と棟方に言われ、そのまま実家に出戻り。波乱万丈過ぎる。
それでも生まれた幼子をかかえて、東京に押しかけて棟方が居候していた友人宅に居候。
友人も相当おおらかよね。
とにかく、無名時代の棟方夫妻は、貧乏で貧乏で三度の食事に事欠くほどなのだが、それでも棟方は絶対にいつかゴッホになる、と誰よりもチヤさんが信じている。
戦時中、疎開先に版木を持ってこなかった夫を責めて、東京まで単独版木を取りに戻るのだが、その時の啖呵もよかった「誰がゴッホになるんだ?私はなれないよ?」(だから、あなたは安全な場所にいなさい)
こうやって物語にしてもらうと歴史に名を残す「世界のムナカタ」の影に彼の成功を支えた一人の女性がいたことがわかる。
たくさんのスターたちの足元にも大事な大事な同じくたくさんの支えがあったのだな。
たとえば自分がすごく小さく見えたとしても、人類に貢献する誰かの先祖になってるかもしれない。
腐ること無く少しでもより良い世界を目指して、地道に生きて行くしかないんだよなー。
「ワぁ、ゴッホになるッ!」
1924年、画家への憧れを胸に裸一貫で青森から上京した棟方志功。
しかし、絵を教えてくれる師もおらず、画材を買うお金もなく、弱視のせいでモデルの身体の線を捉えられない棟方は、展覧会に出品するも落選し続ける日々。
そんな彼が辿り着いたのが木版画だった。彼の「板画」は革命の引き金となり、世界を変えていくーー。墨を磨り支え続けた妻チヤの目線から、日本が誇るアーティスト棟方志功を描く。
感涙のアート小説。
次に読みたい本