iCHi's diary~本は読みたし、はかどらず~

主に読書録。読み終えた本がこのまま砂のように忘却の彼方に忘れ去られるのが申し訳ないので、書き留める。要は忘れっぽい読者の読書日記。

ハッシュタグ#ある朝殺人犯になっていた

藤井清美の「#ある朝殺人犯になっていた」を読んだ。

 

タイトルに#(ハッシュタグ)がついてるなんて面白い。

 

売れない芸人「浮気(浮気と書いてうきと読む)淳弥」28歳が、

知らぬ間にSNSで大炎上、10年前の幼稚園児ひき逃げ事件の犯人にされてしまう話。

 

確かに淳弥は、ちゃんとした人間とは言えないかもしれない。

でも、芸人になるという夢を捨てずにバイトしながら舞台に立つ、真っ当な下積み生活を送っていた。

 

それなのに、朝起きたらツイッター上で「こいつが犯人じゃない?」と

顔をさらされるは、特定班に住所は調べられるは、

しまいには実家の家族まで写真を載せられ、段々と追い込まれていく。

 

きっかけは、本当に些細なこと。「え、そんな事件あったっけ?」と聞いただけ。

 

本当にすっかり忘れていただけだし、何ならすぐに思い出したんだけど世間からは

 

あの事件を(しかも実家の近くで起こった事件なのに)忘れたなんて信じられない。

 

と・・・

 

ちょっとした火種に油を掛けに掛けて炎上させたやつがいるのだ。

 

徐々に迫る顔の見えないネット民達の攻撃に疑心暗鬼になり、色んな人を疑う淳弥。

そして、過去に発言した事をいちいちあげつらわれる恐怖。

 

なんであんなこと言っちゃったんだ、俺。

どうして、その部分だけ切り取って上げるんだ?

 

だれだって、淳弥と同じくらいのやらかしはあるだろうし、

いつもいつも正しい選択ばかりしているわけではない。

 

一旦炎上したらそう簡単に火を消すことができないという、じわじわ追い詰められる様子がこわすぎて、途中で読むのをやめたくなってしまった。

 

SNS怖いと言われるゆえんって、これだわね。

 

ネットの世界のことだから、見なければいいんでしょという年代には想像ができない恐怖。

 

最後は、「真犯人を捕まえる」しか道がないと、ライブ配信でネット民の集合知を総動員して犯人を追い詰める。

 

よかった!面白かった!最後にライバルの漫才師たちが協力して芝居を打ってくれるところもじんと来ちゃったよ。

 

淳弥の相方も、なかなかいいオトコなのよ。

怖い怖い、と書いたけどお笑い芸人淳弥のひとり語りで話が進むので、全体的に軽い語り口。ユーモアもあるしね。

オススメ。

 

この本、Audible(オーディブル)で読めます~オススメ。

 

今年流行りのもう一冊のハッシュタグ本。

SNSの怖さにまつわるこちらも実はもう読んだので、後で感想上げる予定。

 

 

 

最終話だけだけど、まるまる読めます。

正直後味悪い系。ことしのこのミス13位だよ。