津原泰水の「ヒッキーヒッキーシェイク」を読んだ。
ヒキコモリ支援センター代表のカウンセラー竺原丈吉(JJ)は、いつも度の入ったサングラスを掛けて場当たり的に喋る、実に胡散臭い男だった。あるとき彼はネットを介して顧客たちを連携させ、アゲハ・プロジェクトを始動する。「人間創りに参加してほしい。“不気味の谷”を越えたい」。当惑するヒッキーたちの疑心は、“Jellyfish”を名乗る謎の暗鬼を生み、やがて計画は世間を騒がす事件へと発展していく…。JJの目的は、金か、カウンセリングか、たんなるヒマ漬しか?そして、ジェリーフィッシュの正体とは―。
この作者、以前新聞の連載小説で読みきれなかったため苦手意識を持っていたのだが、いやー読んでよかった!やっぱり食わず嫌いは良くない。
主人公(?)竺原丈吉(じくはらじょうきち)ことJJ は、引きこもり支援センターのカウンセラー。
だが、彼らのことを「ヒッキー」とよび、無理やり外に出すことはしない。
それどころが、「僕の飯の種がなくなるからいつまでも引きこもってていいんじゃない?」なーんてうそぶく。
おかげで、とうの引きこもりたちの信頼はとても厚い。嘘くさくないのだ。
JJがこんな感じのカウンセラーを続けている理由は何か、と言うのがミソの物語なのだが、語り口が軽妙で結構深刻な話だけれどサラサラと読める。
途中何度もヒッキーたちはそれぞれ、JJのことを疑う。信用していいのか、わるいのか?
JJの思惑にそっているのか沿っていないのかわからないが、ヒッキーたちはちゃんと自立をしていくのである。
作中のヒッキー達のニックネームがそれぞれ、パセリ、ローズマリー、セージ、タイムなんだけど、有名な曲、ほら、あの、あのーーー
って脳が痒くなったのでググりました。
サイモン&ガーファンクルの曲。
中学時代に音楽の授業でやったので歌える。
正しく、鼻歌歌いながら読めちゃうような(とはいえ軽薄ではない)楽しい気分がいただける作品。
才能のある子程社会になじめない、そんなあるあるを見事に逆手に取った、胸のすく読後感。
やったね、JJ!