本屋大賞にノミネートされていた小田雅久仁の「残月記」を読んだ。
近未来の日本、悪名高き独裁政治下。
世を震撼させている感染症「月昂」に冒された男の宿命と、その傍らでひっそりと生きる女との一途な愛を描ききった表題作ほか、二作収録。
「月」をモチーフに、著者の底知れぬ想像力が構築した異世界。
足を踏み入れたら最後、イメージの渦に吞み込まれ、もう現実には戻れない――。
最も新刊が待たれた作家、飛躍の一作!
いやー思い切り想像と違ってびっくり。
そもそも…私がレビューなど一切読んでなかったからなのだが、時代小説だと思ってたからね。
蜩(ひぐらし)の記と完全に同じジャンルに入れてたわー
しかし、この表紙の落ちつき方はまさか中身が月をモチーフに据えたディストピア短編とは思わんでしょー
特に第一話「そして月がふりかえる」はこれで終わったか、と思う。
なんか、これから「僕の地球を守って」的なスケールのでかい物語が始まるって選択肢もあったんじゃなかろうか?
オープニングだけではしごを外されたような気分。
話は逸れるがこの間僕たまの続編を読んだ。
ひさしぶりにあの頃を思い出して、「あの頃はキュンキュンしてたなー」と思った。(決してキュンキュンしたのではない。生半可なことではこの毛が生えた心臓はときめかないのだ。)
第二話「月景石」は叔母の形見である月の表面のように見える石を枕の下に入れて寝ると嫌な夢を見る、という話だ。
主人公のすみかはきっと今の彼氏はそんなに好きではないのだろうと思ったが、あにはからん別世界でわざわざその男と巡り合う。
好きだ、という熱い気持ちというより、30歳を少し過ぎた女性のロールモデルと自分の差を埋めるために仕方なく「できる年上の男」と「同棲」をしている気がする。
そして、愛していないくせに離れていく男の気持ちを察して怯えている。
かわいそうだけど、むしろみんなそんなもんかも。
心から愛する毎ベターハーフが見つかる人は稀なんじゃなかろうか。
最後は夢の中の世界と現実の世界の比率がおきかわってしまう。
寝覚めの悪いファンタジーでイマイチ理解できないまま終わってしまった。
理不尽な暴力で命を奪われる話はわざわざ読みたくなかったなーというのか正直な感想。
第三話は、結構長い話で「月昴症」という病気が流行る近未来の話。
その世界は最悪な独裁者が支配しているのだが、あながちない話ではないくらいの現在の私達との地続き感がある。
月昴症は狼男のように、満月のときに尋常ではない力がみなぎり、新月のときのようには死んだようになってしまう感染症。
発症した者は一昔前のハンセン病のように隔離され、非人道的な扱いを受けるのだが、まるでその世界はジョージ・オーウェルの「1984年」のように独裁者が支配するディストピアなのだ。
・・・過ぎたけどね、1984年。
しかし「残月記」は「1984年」のようだと言ったけれど、ディストピアの中で純愛を貫いた話なので救いようがない話ではない。
この話も思い出した。
こちらもドラキュラのように不死の体になる病「オキナガ」の人たちが隔離されて生きる話。「ゆうきまさみ」究極超人あ~るも好きだけど、これもおもしろいよ。
月を軸にしたちょっとブラックなファンタジー。
本屋大賞ノミネートされていたので気になっている方はぜひ。
ちなみに、全く読んだことがない作者なので検索しててみたら読んでみたかったこれを書いたた人であった。
タイトルだけで面白い。
確かに本は知らぬ間に増殖しているなとは思っていたがやはり結婚して子どもが増えていたのだったか。