伊坂幸太郎の「ホワイトラビット」を読んだ。
兎田孝則は焦っていた。新妻が誘拐され、今にも殺されそうで、だから銃を持った。母子は怯えていた。眼前に銃を突き付けられ、自由を奪われ、さらに家族には秘密があった。連鎖は止まらない。ある男は夜空のオリオン座の神秘を語り、警察は特殊部隊SITを突入させる。軽やかに、鮮やかに。「白兎事件」は加速する。誰も知らない結末に向けて。驚きとスリルに満ちた、伊坂マジックの最先端!(解説・小島秀夫)
なんて言ったらいいんでしょう、伊坂幸太郎にしか書けない空気感だな~
今回の話では盛んに作者が読者に話しかけてくる「そんなご都合主義と思うかもしれないが、そんなことはない」とか「最初に説明しておかなければならない」などなど、人を食ったようなナレーションが差しはさまれる。
もちろん計算づくだ。
ちなみにタイトル「ホワイトラビット」は因幡の白兎から取られている。
古事記に出てくる有名すぎるエピソード向こう岸まで渡るために、「数を数えてあげるから並んで~」サメをだますあのウサギだ。
そうそう、この物語前半の主人公は兎田という。
そして、ああ犯人の名前は「稲葉」だったな・・・くぅぅ細かい気遣い!
物語の中にはもう一つ、何度も「レ・ミゼラブル」が登場する。
読み終わるまで5年かかったっす!という軽すぎる空き巣見習いとか、なんか素敵やんと思う。
先輩にすすめられた本を5年かけて読む。なかなかできん素直さ。当の泥棒の先輩は映画版でしか見ていないのだか。
ちょっと読みたくなったけど、読み終わるまで5年か・・・と思うと私も映画を見ることにしよう。
さて、ストーリーは途中から注意深く読んでいないとちょっとだけ空中に宝利投げられたような気分になる。
特に、立てこもり犯、立てこもり犯が探している男、なぜかかかわりあいになった空き巣、今までの不運を帳消しにしたい親子たちがくるくると入れ替わる。
ネタバレになるので言えない。言えないけどこの伏線回収の爽快さはさすが伊坂幸太郎!という感じ。
悪い奴はちゃんと捕まる。いい人だと思っていた人も過去の罪を告白して捕まる。
不遇続きの者はちゃんと温情措置がある。すべてはパチッと音がするように決まった気がする。
読んで楽しい小説っていうはこういう物をいうんだろうな~
あ、でも今回のヒーローである黒崎は空き巣だった。