横溝正史の「七つの仮面」を読んだ。
私が聖女ですって? 娼婦になり下がった、それも殺人犯の烙印を押されたこの私が……? 気品に満ち、美しく清らかだったミッションスクール時代。確かに聖女と呼ばれるにふさわしい時期もあった――だが、醜い上級生りん子に迫られて結んだ忌まわしい関係が私の一生を狂わせた。卒業後も執拗に付きまとう、りん子。やがて、あの恐ろしい事件が……!! 表題作ほか六篇を収録した傑作事件ファイル。
表題作、七つの仮面を含む短編集。
七つの仮面は主人公の一人語りで綴られる物語なんだけど、主人公のエキセントリックな心情を表すためか、とにかくまーデスマス調とデアル調がひっきりなしにいれかわって、お尻がもぞもぞする文章。
聖女と呼ばれた主人公は、最後にあなたはひどい人だ、と金田一に断罪されてしまう。
ううう、でも優しいから警察に引き渡したりはしない。その結果何が起こるかというと、犯人が自ら罪を償うということに。
等々力警部に怒られるパターンである。
若いうちに両親ともなくした彼女は、楽しそうな方へ楽しそうな方へ行ってたらえらいことになった、というお手本のような話。
なまじ美しかったから余計不幸になった気がする。とんでもないお姉さまに惚れられてしまったのが不幸の始まり。
他にも5編の短編あり。この中では日時計の中の女がすっきりしなくて印象に残った。
「猫館」(ねこかんではなく猫やかた)
タイトルが生理的にくる「雌蛭(めひる)」血縁を手にかけるあたり・・・もうあかん。
「日時計の中の女」(そりゃ、旦那が悪いよ!誤解は解いとけ~)
「猟奇の始末書」(金田一耕助の学生時代が垣間見える)
「蝙蝠男」あの時代も受験戦争があったんだなー
「薔薇の別荘」(これはちょっと女王蜂みたいな?設定のシンデレラ?ストーリー)
表紙が相変わらず怖い「七つの仮面」。
新しい文庫版の表紙は漢字一文字シリーズだけど、絶対杉本一文氏の描いた表紙の方がいいよねー!
金田一耕助のやさしさに震えたい方におすすめ!