横溝正史の「魔女の暦」を読んだ。
扉絵が怖いというかすごいというかなんとも言えぬのはいつものことながら、髪の毛が蛇になっているメデューサが表紙を飾っている。
残念ならがこのお話では、メデューサはかなり残念な役どころだ。
浅草六区のいんちきレビュー劇場『紅バラ座』の作者柳井良平の脚本による『メジューサの首』と題する怪しげな演目で、一座の踊り子飛鳥京子・霧島ハルミ・紀藤美沙緒の三人が、一つの目を共有する“三人の魔女”の役を演ずることになったのだった。黒い手袋をはめた手が描き出す恐るべき“魔女の暦”とは…。そこには、「第一の犠牲者‐吹き矢 第二の犠牲者‐鎖 第三の犠牲者‐メジューサの首」という不吉な文字が並べられていたのだった。そして、舞台で踊りながら飛鳥京子が吹き矢で殺され、隅田川の橋の下では全裸の霧島ハルミが鎖で縛られて殺されていた。この猟奇的な踊り子連続殺人事件を金田一耕助はいかに解くのか…。
ある日、差出人不明の手紙に誘われ浅草にレビュー(と書いてあるけどまあストリップ)を見に行く金田一耕助。
舞台上で起こる殺人事件は最初は自殺と思われたが、三人の魔女役の女たちが次々と殺されていく。
犯人は結局、仲間内からあいつではないだろうと言われてていた人物。
正直その殺人の動機は浅はかで自分勝手だが、とりあえず計画性と舞台演出力がありすぎで、金田一耕助もなかなか殺人を止めることができない。
そういえば、金田一耕助と言えば岡山あたりの閉ざされた島で、薄曇りのなか、田舎の人々の因習に混乱しつつ事件を解決する!っていうイメージが強いけど、
結構「舞台」周りの事件も多い。「幽霊座」しかり「落ちたる天女」しかり。
今回一緒に収録されていた「火の十字架」しかり。
人々が集まる都会の事件とでも言いましょうか。
田舎だろうが都会だろうが人が集まるところに感情のもつれあり。
しかも、舞台となるレビュー一座ときたら、座付き作家とその内縁の女優、さらにその愛人の若い男優、の思いを寄せるうぶな新人女優、みたいな感じで絡みあっちゃってる。
内縁の妻が浮気をして、さらに旦那も浮気をして・・・
もう田舎の因習なんて目じゃないわけで。
これが昼メロだったらドロドロしすぎて回収できなくて打ち切りになりそうなのである。
昼メロじゃなくても、私の脳内で人間関係図が出来上がらずに
読んでてぼーっとしてしまった。
しかし、犯人の逮捕後のあまりの反省のないコメントにサイコパスっぽさを感じてゾッとした。
人を利用することにまったく悪びれることがないこの犯人は、金田一シリーズの中でもなかなかのシリアルキラーだとおもう。
あ、犯人と思われる何者かが、暦(カレンダー)にしるしをつけている様子、そこだけ映像的に切り取られた描写になっているのだが、どうやらこの日に殺しますよーという予定を書き込んでいるのである。計画通り、っていうところも、この犯人の演出力のすごさをあらわらしているのかしら。
短編「火の十字架」のほうは、こちらも舞台の話。
やり手のストリッパーがこん睡させら衣装ケースに入れられ、しかも運送会社から発送されていた。
なんかこの荷物いやに重いや!っていうパターンは最近何回も見たような・・・
内容がかなり刺激的というかエロティック?というより非道徳的なのであんまり子供には読ませたくない感じであるが、期待して読むほどエロースではないので断っておく。(誰に?)
ただ、戦時中の青年たちの気持ちがあらわされていてそんなものなのかーと思った。
大人あなたにおススメ!