iCHi's diary~本は読みたし、はかどらず~

主に読書録。読み終えた本がこのまま砂のように忘却の彼方に忘れ去られるのが申し訳ないので、書き留める。要は忘れっぽい読者の読書日記。

ラゴスの旅じゃなくて「旅のラゴス」である意味

高校時代にはまっていた筒井康隆の「旅のラゴス」を読んだ。

 

旅のラゴス (新潮文庫)

旅のラゴス (新潮文庫)

 



何度も夏の文庫キャンペーンのラインナップに上がっているこの話は、まさに若者に読んでほしい爽やかな冒険譚だ。

 

ストーリーは、我々の文明が終りを迎えまた最初からやり直している世界。

 

そこでは人間に高度な文明を失った代わりのように特殊能力が備わっている。
転移という、テレポート能力があるのだ。

 

その世界をただひたすらに旅をするラゴス

 

彼にももちろん転移の能力はあるが、その能力はほとんど使わずに、ひたすらにスカシウマにのって北から南へ、南から北へと旅をする。

 

奴隷になったり(二度も!)王様になったり、その旅は消して安楽なものではない。そして彼の旅の目的は何だったのか、読者にははっきりとは伝えられない。

 

数十年ぶりに実家に帰ったラゴスは、その経験を活かして様々な産業革命を「計画的に」引き起こす。ラゴスは旅の途中過去の文明を学んだので、これから起こるであろう人類の進化を知っているのだ。

唯一神の視点を持っていても、抗えない人生の終わりを前にして、ラゴスは再び旅に出る。

 

 

最後の旅立ちの日のシーンは泣いた。

 

ラゴスはほんとよか男で、感情に押し流されず全ての人に節度と親愛の態度を示す、大人の男。

こんな大人になりたいものだ。

タイトルが、ラゴスの旅じゃなくて旅のラゴスになっているのも、ものすごく頷ける気がする。

 

旅をすることによりラゴスになるというか…うまく説明できないが読めばわかってもらえるはず!

 

SFだけど、ファンタジーぽくもあり。そんなに長い話ではないので、読んでない全ての人にオススメしたい。