iCHi's diary~本は読みたし、はかどらず~

主に読書録。読み終えた本がこのまま砂のように忘却の彼方に忘れ去られるのが申し訳ないので、書き留める。要は忘れっぽい読者の読書日記。

私のなかでpopが立ってます「たそがれ清兵衛」

 つい先日、テレビでも映画の方(真田広之主演)をやっていたみたいですね、見損ねたが。
それにしても、最近「藤沢周平」さんがフィーチャーされている(ような気がする)。
キムタクが主演した武士の一分も彼の原作であるし、私のなかで「注目株!」というポップが立った状態でした。

 初めて手に取った文庫本はこれ。かなり期待していたので、短編集ということでまず驚いた。「映画一本分」くらいの長編かと思っていたので。
そして、最初の一編「たそがれ清兵衛」を読み終わり、あれ?あんまりかっこよくない・・・真田広之と思って読むからなおさら。
やっぱもう少し人生経験積んでから読んだ方がよいのか?等と考えていました。

 しかし、さすがは高く評価されているだけはありました。最後の「祝い人(ほいと)助八」まで読んでなんというか「いい読書をしたなあ」という幸福感。 

 8つの短編集のベースは「腕」はあるけれど評価をされていない人々。変わり者とされ、全員へんてこなあだ名をつけられているが、彼らは世間ではなく自分の中のルールに従う強い人でもあるのだ。
 たしかに、武士といえどもこのころは腕力だけで生きている人はおらず、今のサラリーマン達とおなじく如才のなさが求められているのだろう。
 実際タイトルはすべて「うらなり与右衛門」とか「ど忘れ万六」「日和見与次郎」等少々あざけりを含んだものばかり。

しかし8編読むと、本当に強い人は孤独であるのだというのがわかってくる。私の浅い人生経験でも十分楽しめましたよ!藤沢周平

 ところで、大好きな池波正太郎さんとくらべると、なんつーか渋い、控えめで地味な感じもします。どちらもかっこいいけど、たとえて言うなら水墨画と蒔絵のちがいのような。

たそがれ清兵衛
藤沢 周平著
新潮社 (2006.7)
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